◆衆院選の争点から消えかかっている感が否めませんが、年金問題は非常に重要です。前回の衆院選では、民主党は最低保障年金制度の創設を訴えました。ところが、年金受給対象者全てに月額7万円を補償するという金額が先走りし、民主党のバラマキ政策の一部であるかのような印象を与えたことは大きな誤解であり、その誤解を解く努力を民主党が怠っていることは問題です。

    ◆今回の民主党の衆院選マニフェストでは、最低保障年金制度の実現を社会保障国民会議の議論を経た上で実現を目指す、としています。前回のマニフェストでは財源を消費税に求め、支給額も7万円としていましたが、財源・支給額の記述は消えています。支給額は議論を経た上でということかもしれませんが、財源に関しての記述が消えた理由は不明です。

    ◆最低保障年金の財源が税か保険料かでは、大きな違いがあります。今回の自民党の政権公約では「保険料を納付した者に年金を支給することを原則に」という文言があり、引き続き年金制度の財源を保険料に求めていることが分かります。民主党は記述が消えていますが、引き続き税を財源としているならば、両者が理想とする制度には大きな違いがあることになります。

    ◆現在の年金制度には問題は様々な問題がありますが、筆者は生活保護制度との関係性を問題視しています。生活保護受給者の急増が問題視されており、特に働ける若い世代の受給に疑問の声が上がっていますが、むしろ深刻な問題は高齢者の受給です。不公平・不公正を多分にはらむ問題だからです。

    ◆高齢者の生活保護受給者の中に、年金保険料未納者が多数含まれていることが指摘されています。若い世代の生活保護受給者に対し、就労を勧め、制度からの脱却を求める声が高まっていますが、高齢受給者に無理に就労を勧めることはできないので、高齢者への生活保護制度は年金保険料を納めない人への「第2年金」の様相を見せています。

    ◆高齢者の年金未納は、年金保険料を納付すべき若い頃に低所得だったのか、それとも怠慢だったのか不明です。今さらその問題を解明することもできませんが、問題は今後です。

    ◆バブル崩壊後、不況が続き、ロスジェネ世代と呼ばれる正社員に登用されなかった層の先頭ランナーは、すでに40歳代に入っています。この層の現在の生活保護受給については、まだ働ける年齢ですので、就労の勧奨や雇用環境の改善等、打てる手はあるかもしれません。しかし、彼らの多くが年金保険料を納付できず、将来の生活保護受給予備軍となっています。

    ◆仮に今、就労を勧め、年金保険料を納めるようになっても、納付期間の半分しか納められず、老後に受給できる年金は本来の支給額の半額です(未納が続けば無年金)。将来の生活の困窮は明白です。保険料納付を前提とした年金制度は、納付している人には公平な制度ですが、未納者の老後は保障できず、しかし見捨てられないため、税の支援が必要となる問題を抱えています。

    ◆国民年金の保険料納付率は60%を切ったとの報道もあります。自民党の政策は保険料納付が原則ですが(例外が何かは不明ですが)、上記の問題を考えると、将来顕在化する現在進行中の問題の解決にはなりません。未納者の老後の支援は生活保護、すなわち税が財源ですが、少子高齢化の時代ですから、税負担のしわ寄せは未来の世代に託すしかない。それでは不公平です。

    ◆民主党が模索している税を財源とした最低保障年金も決して完全ではありません。保険料納付者と未納者を区別せず、同時に一定の年金額を保障すると不公平ですので、未納期間分のハンディを加えて制度を発足させるためです。しかし、制度発足後は保険料納付が不要ですから、将来の生活保護受給者の増加を防ぐためには、税を財源とする制度への改革は検討の余地があります。

    ◆税を財源とした制度に変え、基礎年金については年金保険料納付を不要とすれば(所得比例部分は引き続き必要です)、その代わりとして、消費税・所得税等のさらなる増税が必要になります。現在、低所得者が納められない年金保険料分も増税で対応するため負担は高まりますが、将来の世代へのツケは防ぐことができますし、時間をかけて蓄えるというメリットも考えられます。

    ◆逆に保険料制度を維持し、納付を徹底するならば、現在のような甘い制度では対応不能です。明日の生活費に困る層から将来の年金保険料を徴収することが現実的かは不明ですが、税金について国税庁が脱税の摘発を行っているように、年金保険料についてもそのような組織対応が必要でしょう。

    ◆民主党は税・保険料を一体的に徴収する組織として「歳入庁」の設置構想を前回のマニフェストで示し、今回も引き続き提案しています。みんなの党など歳入庁設置を提案する党は他にもあるのですが、保険料制度を維持する姿勢を見せている自民党の公約に、それがありません。年金保険料の未納問題はどうするのか、自民党はどのように考えているのでしょう?

    ◆年金制度の将来については、自分たちの老後の収入だけでなく、その際の税負担が高まる恐れも考えると、依然として重要な問題です。前回衆院選の大きなテーマが年金を含む社会保障制度であったことを考えると、この問題が民主党政権でどの程度解決し、どの程度積み残されているのかをきちんと整理し、その上で問題解決をどの政党に託すか、選び直す必要があります。




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    2012.11.30 Fri  - 政策 -   コメント 0件

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