◆橋下市長が、韓国との竹島の共同管理および国際司法裁判所での解決を訴えています。国政進出を意識している点もあると見られますが、それ以前に、ツイッターで国民の関心事に方向性を示す市長の政治姿勢から、現在最大の懸案となっている外交問題に意見をしない、という訳にはいかないのでしょう。しかし、タカ派・ハト派ともに余り納得感のない意見に見えます。

    ◆市長の主張は国際司法裁判所の決定が下るまで、韓国に「竹島を日韓で共同管理する」方針を承認させようというものです。この「共同管理」という概念が「竹島は日本固有の領土」という姿勢を一歩たりとも崩したくない考え方を持ちの方から批判の的になっています。もちろん、「韓国はそんな提案をのまない」という現実的な反論も数多くあるようです。

    ◆筆者も、「共同管理」には反対しませんが、現実的には難しいと考えます。韓国政府や国民は決して愚かではありません。国際法について全く研究していない訳ではないでしょう。日本の竹島領有が国際法上正当な手続きで進められたことは承知しているでしょうし、逆に武力で李承晩ラインを設定し、竹島を占拠した手続きに問題があることも理解しているはずです。

    ◆しかし、外交戦略の損得を考えれば、韓国は「国際法上は違法だった」という主張を行う訳にはいきませんし、「国際法上違法である」という判決が下る可能性のある国際司法裁判所に訴えることのリスクも十分理解しているはずです。そもそも実効支配を完了しているのですから、日本が自衛権を行使しない限り、その支配が崩れる訳ではないので、リスクを冒す必要がない。

    ◆結局、「国際司法裁判所での解決」という外交カードは、韓国の国際法上の違法性をアピールし、国際世論を日本側に誘導しようとする戦術に過ぎず、韓国が提訴に応じる可能性は限りなく低いと考えます。しかし、日本海に浮かぶ小さな岩山を巡る小競り合いに関心を持つ第三国は少ないため、日本側の戦術も余り効果がないのでは?と筆者は疑問視しています。

    ◆一体我が国は竹島の何を欲しているのでしょうか?海洋権益など損得に関係ない、自衛権を発動することによる損失(人命・経済的損失等)が生じてでも取り返す、程の強いアイディンティーに関わる問題ということでしょうか。だとすれば、これは韓国も同じでしょう。間違いなく、両国は譲ることはない。竹島の問題は最終的には日韓両国で解決する以外にないでしょう。

    ◆橋下市長は「固有の領土だ」と主張し続けても解決しない、と指摘しています。筆者も同意見ですが、上記のような強いアイディンティーを基盤とする主張においては、問題を中途半端に解決させるよりも、解決させずに「固有の領土だ」とつば競り合いを続けることの方に意義があるともいえます。

    ◆橋下市長が問題視すべきは竹島以外だと筆者は考えます。特定の人の激しい感情はさておいて、ニュートラルな一般国民(これがどの程度の割合で存在するかが重要ですが)に、どのように日韓関係の将来像を提供できるかではないでしょうか?これは同じ領土問題を抱えるロシア(あるいは中国)に対しても、です。竹島や慰安婦問題は日韓の将来像を具現化する過程の問題です。

    ◆日韓の二国間関係の将来像は簡単には描けないでしょう。描けないくらい、竹島や慰安婦問題という障害が強い。だからこそ、現実的に解決できる問題から取り組むべきです。領土問題において竹島の解決は焦らず、筆者はむしろ北方領土の問題解決を優先してはどうかと考えます。

    ◆北方領土については、日ロ両国ともに「領土問題がある」という点で一致しています。この点、竹島や尖閣諸島よりも両国の問題認識の共有度合いは高い。にもかかわらず、問題を解決できない原因は「固有の領土」という、日ロどちらに帰属するのか、シロかクロか、という選択肢でしか議論できないためです。

    ◆しかし、問題の勃発から間もなく70年、時間が経過し過ぎ、国後島・択捉島には多数のロシア人が居住し、彼らのコミュニティが築かれています。仮に北方四島全てが日本に返還されたとして、このロシア人をどのように扱うのでしょうか?

    ◆日本は在日外国人の参政権を認めていません。筆者は在日外国人の参政権付与には否定的です。その場合、国後・択捉二島のロシア人は参政権を失います。公務員などの職への就職も制限されますから、警察・消防などの職に従事するロシア人は失職することになります。そこへ日本人の警察・消防が駐屯し、日本人の首長が行政を行い、通貨は円の使用を強制することになる。

    ◆私たちに日本人としてのアイディンティーがあり、北方四島を固有の領土として諦めきれないように、現地のロシア人もロシアへの母国愛があるでしょうし、ロシア領土である北方四島への意識も高いことでしょう。彼らの感情を無視して、本当に四島の完全返還を進められるのでしょうか?

    ◆歯舞・色丹諸島は日ソ共同宣言において、日ソ平和友好条約の締結とともに返還することが定められています。この合意をロシア政府が引き継ぐ限り、歯舞・色丹諸島の返還は求められるかもしれません。ロシアのプーチン大統領は領土問題について「引き分け」を提案していますが、これは残りの国後・択捉二島をどうするか、という問題意識に基づくものと考えます。

    ◆国後・択捉二島にかつて住んでいらっしゃった方の郷土への思いをたやすく踏みにじる訳にはいきませんが、すでに70年の時間が経過した今、筆者はこの二島を再度日本領として編入することは難しいのではないかと考えます。

    ◆日本がアイディンティーの問題として二島をどうしても割譲できない、ロシアも同様に割譲できないということであれば、「固有の領土」という概念を放棄する以外にないのではないでしょうか?すなわち国後・択捉二島を「共同領有地」とし、施政権をロシアに信託してはどうかと考えます。

    ◆橋下市長が批判にさらされている通り、筆者も「ロシアは飲まない」「絵空事」という批判を受けるかもしれませんが、施政権がロシアにあり、ロシアの領土としての二島も維持される限り、現地のロシア人のコミュニティは守られますし、日本側も地図から二島を消す必要はなく、二島への自由な往来や非武装化、投資、海洋権益の分かち合いによって、北の憂いを取り除けます。

    ◆日ロ間で、これまでの人類の歴史にない新しい試みを成功させられるならば、それは「固有の領土」を巡る、韓国や中国との対立にも、一石を投じられるのではないでしょうか。また、対話によって日ロ間の領土問題を解決することで、国際社会の日本への支持を得る一方策になるかもしれません。

    ◆そもそも竹島も尖閣諸島も、ヨーロッパ式の「主権」の定義が入り込む前は、厳格に国境線など引いておらず、日韓、日中それぞれの漁民が立ち寄ったりしていたのでしょうし、古文書を一生懸命紐解いて、どちらの国に帰属していたかを問い続けることは非常に難しい(「固有の領土」にこだわる限りは、この歴史論争を続けるしかないのですが)。

    ◆国境が曖昧だった東洋式の概念を、近代の主権国家の概念に当てはめようとすると、むしろ「共同領有」の方が望ましい可能性もあります。橋下市長は竹島について「固有の領土」をめぐる争いを続け、その間「共同管理」を提案しましたが、筆者は、その逆で「共同領有」を模索し、管理は韓国に委ねればよいのではないかと考えます。

    ◆「どうしても韓国を排除する」という強硬論を掲げたいならば、竹島問題の解決を特に目指さず、お互いに怒鳴り続けるしかないでしょうし、バカにしているのではなく、それが両国民の感情に最も合致していると考えます。

    ◆一方で、武力行使以外の解決を目指すならば、日本にとっての竹島の重要性はアイディンティーの問題と海洋権益(漁業権等)にあると考えます。それならば領有権は「共同領有」として韓国と譲り合い、非武装化と引き換えに一定の権益を確保し、竹島の管理は韓国に委ねてしまえばよいのではないでしょうか(日本が管理のために税金を使用する必要もなくなりますし)。

    ◆国際司法裁判所での決着にせよ、共同領有にせよ、解決に時間はかかるでしょう。しかし、シロクロ決着をつけるより、グレーであることの方がアジア的ですし、竹島を巡る歴史に最も合致した答えではないかと筆者は考えます。その解決のためにも、まずロシアとの問題を解決し、その上で韓国に平和的解決を求め続け、韓国の譲歩を待つ以外にないのではないかと考えます。

    ※海底資源が竹島よりも豊富と見られる尖閣諸島についても、中国を意識して開発すらできないくらいならば、共同領有とした上で、日本が施政権(管理権)を保持し続け、早く日中の共同開発に着手した方が、より利益を得られるのではないでしょうか。将来中国を抑え込んで、日本が尖閣諸島の海洋権益を独占するということは、現実には難しいように感じます。




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    2012.09.24 Mon  - 外交 -   コメント 0件

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