◆政権交代目前で、まさか自民党総裁選から退く判断に至るとは思いませんでした。敗色濃厚といえども本当に撤退すべきだったのか、谷垣氏の政治生命を考えれば、どうも解せません。しかし、撤退を宣言された以上、谷垣時代を少し振り返ってみたいと考えます。

    ◆野党第1党の党首として、谷垣総裁が日本の政治に及ぼしてきた影響力は極めて大きいと考えます。民主党政権において二度の首相交代を実現し、参院選勝利後、ねじれ国会での野党の権力を駆使して、民主党の拡張的な財政政策をバラマキと批判し、数多くの政策を撤回に追い込むとともに、財政再建の視点から三党合意の締結による消費税増税を実現しています。

    ◆民主党政権の度重なる党首交代と政策の迷走と対比すると、谷垣総裁は任期中、その権力基盤が揺らぐことはなく、自身が参院選で公約に掲げた通り、財政再建に資する消費税増税という政策を野党の立場でありながら実現させた政治手腕は、その政策の妥当性はともかく、評価に値するものと考えます。

    ◆にもかかわらず自民党において続投に支持が得られなかった理由は、やはり国民に政策を訴えかける、すなわち発信力に問題があったのかもしれません。民主党のマニフェスト実行を阻止し、マニフェストの趣旨に反する消費税増税を三党合意という形で進めることは、谷垣氏の政治信条には適ったのかもしれませんが、一方で、増税以外の政策が国民には今一つ伝わっていない、

    ◆社会保障不安の解決策について国民を説得し、国民の合意を得られた訳ではなく、社会保障改革は「一体改革」であったにもかかわらずとん挫しています。デフレの脱却策も不透明です。尖閣諸島への香港人上陸事件では、逮捕・起訴を主張しましたが、以前の自民党政権も即時釈放を行っており、同じ政党でなぜ異なる対応を主張するのか矛盾が見られました。

    ◆外交・安全保障問題では、筆者は抑制的な立場をとることに反対ではありませんが、強硬姿勢が望ましいと考える自民党議員は谷垣氏から離れて行ったでしょうし、またそのような議員を説得するという活動も特に見られません。TPPについても慎重姿勢を示しましたが、従来、自由貿易の推進・日米関係強化を掲げてきた自民党の外交・通商政策との整合性も不明です。

    ◆極めつけは、三党合意によって実行した消費税増税を批判し、三党合意ですら議会制民主主義の理念に反するとした内閣不信任案に賛同し、谷垣氏の政治活動の正統性を自ら放棄した対応ですが、これは谷垣氏個人だけでなく、自民党は自ら過ち・問題と認める政治活動を行った、と主張することになり、国民に増税政策の正統性や政治姿勢の正統性を訴えることが難しくなります。

    ◆谷垣氏の立場は極めて難しく、与党を経験した野党の党首として「政治に責任を持つ野党党首」という従来にない役回りと、政権奪回を目指す「戦う野党党首」という従前通りの役回りを期待されました。三党合意・消費税増税を実現することで「政治への責任」を果たしながら、その行為を自己否定することで解散総選挙への圧力をかけ、「野党としての戦い」を演じる。

    ◆この対応が、政治への責任を重視する自民党議員には奇異に映り、一方で、三党合意などを野党としての戦いを放棄しているのでは、という疑義を導き出しています。そこに、先述の通り、政権奪回後の将来ビジョンが希薄という問題があります。早期解散と現在進行形の政治への責任、その矛盾をはらんだ二兎を追った結果、谷垣氏の権力基盤は大きく蝕まれたのかもしれません。

    ◆さて、解散総選挙がいつか、はいまだに不明ですが、三党合意が生きているならば「近い内に」ということです。次の自民党総裁選は実質的な首相選びの性格が強まり、そのために、野党党首の時は低調だったにもかかわらず、今回は立候補意欲者が多く、盛り上がっているようです。汗をかきたくない政治家が多いものだと、筆者は批判的ですが、言っても始まりません。

    ◆重要な点は、各候補者の政策です。報道では石破氏の政策が先行して漏れているようですが、他の候補者は今一つはっきりしません(分野別に漏れ出ている政策もあるようですが)。

    ◆この中で石原氏と安倍氏(安倍氏は立候補すると仮定して)は、きちんとした政策を提示できるのでしょうか?というのも、石原氏は谷垣執行部で幹事長を務めていた訳ですので、その執行部が進めた三党合意や消費税増税を否定することはできません。しかし、内閣不信任案に賛成した手前、執行部の活動を自己否定した戦犯の一人ではあります。

    ◆加えて、立候補を模索した谷垣氏の今後の政策と石原氏の政策にどのような違いがあったのかも重要です。同じ執行部として活動してきた以上、決裂した理由は未来の政策が違うからでしょう。総裁を支える立場の幹事長が弓を引いた訳ですから、谷垣氏では問題があるという理由を明示する必要があります。目指す政策が同じなら、本来谷垣氏を支えるべきでしょうから。

    ※その意味でも幹事長を辞任してから立候補だろうとは思います。派閥の長のご意向や国民的な人気は石原氏にあるようですが、参院選の勝利の際はまだ幹事長ではありませんでしたし、特に幹事長として実績がある訳ではないのですれどもね・・・。

    ◆安倍氏については、元首相としての経験が問題となります。今さら惨めな退陣劇や参院選の敗戦をあげつらう気はありませんが、昨今の外交政策に関する発言を聞いていますと、河野談話の見直しですとか、慰安婦の強制性はなかったといった発言は、ご自身が首相在任中にも方向性の近い内容の発言を行い、そのためにアメリカ議会で非難決議が採択される事態を招きました。

    ◆同じことを繰り返して、再びアメリカ議会の介入を受け、発言を撤回するということにならないのか、その点への説明がどうも不十分です。失敗した政策を再び実行して再び失敗されても単純に困りますし、日本国民としては大迷惑ですので、自身の過去の政権運営を踏まえた政策が求められます。

    ◆また、第一期安倍政権は参院選で負け、国民の支持を得られなかったのですから、どのような政策が支持されず、従ってこの部分を変えた、国民への新たな再説明を試みるといった政治姿勢の転換が必要です。その際に、首相だった当時と余りにも政治思想が変わっていると本当に信頼できるのかも疑義がありますので・・・まあ、反省点を明らかにする必要があるでしょう。

    ※書くのが面倒くさくなりました。基本的には上記のような再出発のための準備は不足しているように見えています。側近の顔触れも変わりませんし・・・。

    ◆それにしても、海外ならば普通は谷垣氏で選挙だろうという意見を耳にします。谷垣氏をトップに自民党は政策を組み立て、与党に対抗してきたのですから、国民には当然谷垣氏で信を問うのが普通は筋です。谷垣氏の党運営で自民党の党勢が回復したのですから、その回復後に谷垣氏を立候補断念に追い込むというのは、自民党もちょっとやり過ぎではないか、と同情します。


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    2012.09.10 Mon  - 政治 -   コメント 0件

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