◆先日の記事「消費税収は景気に左右されないのか-修正版」について、コメントを頂きました。大変貴重なコメントで、当方が納得した個所もあり、それらを踏まえて、改めて記事を再掲いたします。

    ◆前回の記事では「消費税収の安定は名目GDPの安定の結果」という位置づけで記載しました。しかし、消費税率を5%に引き上げて以降の日本経済は「名目GDPの安定」と呼べるものなのかどうかという疑義が、頂いたコメントで示されています。このご意見に対しては以下の通り考えております。

    ◆まず、財務省がホームペーで公開している消費税収の安定性に関するグラフです。

    H24.4.18消費税収2-財務省

    確かに、消費税収は10兆円前後で安定しており、所得税・法人税と比較しても、その安定性に疑いの余地はありません。しかし、本稿が問題とした点は、消費税収の安定は消費税という制度によるものなのか、それとも、消費税収の安定は税制とは別の要因があるか、です。

    ◆この点について、まず消費税収の推移をご覧ください。1989年4月から消費税(当時の税率は3%)が導入されましたので、データを正しく比較する趣旨から、下図の左は1990年から1996年(翌年の1997年から税率は5%に引き上げられます)までの税収の推移を示しています。一方、下図の右は消費税率が5%に引き上げられた後で、1998年からの税収の推移です。

    H24.4.20消費税

    ※1990年、1998年の税収を100としてグラフを作成しています。


    ◆グラフの右は、財務省の公表データと同じ時期のものです。1998年以降、税収は95から105の間に収まっています。財務省はこの期間の税収の推移から、「消費税収は所得税・法人税と比べて景気の変動を受けにくい」と説明しています。一方、グラフの左は、税率3%の時代の消費税収の推移であり、財務省ホームページにおける消費税収の安定性の説明では触れられていません。

    ◆この1990年以降のグラフを見れば、税収は1.3倍に増加していることが分かります。比較的景気の変動を受けにくい消費税収がなぜ1.3倍に増加しているのか。この点を検討する上で、筆者は名目GDPの変動に着目しています。下図の左右は、先程の消費税収の推移を示したグラフに、名目GDPの変動を加えたものです。

    H24.4.20消費税・名目GDP

    ※消費税収と同じく、1990年、1998年の名目GDPを100としております。


    ◆頂いたコメントでは、消費税率5%の時期(上図の右)の名目GDPの変動と消費税収の推移には明確な関係性が乏しいとのことです。確かに、名目GDPが増加しながら、消費税収が下落している年(あるいはその逆となっている年)も見られます。この不一致について、折角コメントを頂きましたが、筆者の力量では明確な答えを提示することは難しいと考えております。

    ◆しかし、財務省の主張に基づき、消費税収の95から105の推移が「景気の変動を受けにくい(=安定)」と見なすならば、名目GDPはどのように評価すべきでしょうか。名目GDPの推移の振れ幅は90から105の間です。税収は「安定」で、名目GDPは「不安定」と呼べるかは疑問です。その意味では、安定・不安定の基準は極めて曖昧で、主観で話す場合の表現といえます。

    ◆ただ、仮に名目GDPの変動幅を「安定」と主張しても、実際には1997年の山一証券破たんに始まる金融危機や不良債権処理問題、デフレ、リーマン・ショックと、経済を巡る環境は荒れ続けていました。「名目GDPが安定している」と記載することは、確かに実感とは大きくかけ離れています。

    ◆従って、筆者としては「安定」という表現を訂正し、改めて「消費税収は名目GDPの変動の影響を受けている」という主張を展開したいと考えております。消費税率が3%の時代も含め、名目GDPの上昇(下降)している年に、消費税収が同じく上昇(下降)している年が多いことも考えると、消費税収は名目GDPの変動の影響を受けていると見なしてもよいのではないでしょうか。

    ◆この前提を共有できなければ、確かに議論は不可能になります。ただ、筆者としては、なぜ財務省は税率3%の時代の消費税収の増加を、ホームページにおける説明に使用しないのか疑問を感じています。また、消費税率を5%に引き上げて以降、税収全体が3%時の額に達した年がほとんどなかったことについても、政府も財務省も説明は不十分だと考えています。

    ◆財務省が示した通り、あるいは頂いたコメントの通り、所得税・法人税に比べて、消費税は景気変動の影響を受けにくいという点はすでに納得しています。しかし、消費税増税に不都合なデータやシミュレーションが、あまり公開されていないこと(メディアも追求しないこと)は、何かきな臭いものを感じます。消費税増税論者にとって不都合なデータなのではと邪推します。

    ◆他にも、社会保障費の自然増など財政悪化の懸念は当方も理解していますが、本当にその解決策が消費税増税なのか疑義を感じます。所得税や法人税、その他の税も含めた「税そのものの一体改革」が必要だと筆者は考えます。同時に、税とは切り離して、社会保障への不安を完全に払しょくするような「社会保障制度の一体改革」も必要だと考えます。

    ◆「税と社会保障の一体改革」として本来別々のテーマを一緒に検討する方針には、初めに消費税増税があり、その理屈を整えるために、「景気の変動を受けにくい」「これは社会保障改革のために必要」という理論武装があるのではと筆者は考えています。消費税増税を主張する政治家・財界・メディアとも、どちらかといえば所得税・法人税の増税に痛みを感じる立場の方が多い。

    ◆消費税増税やむなしという論調は本当に真っ当な理念から形成されているのか、筆者は疑義の念を覚えます。


    ◆なお、補足ですが、欧米諸国のように間接税主体の税制に全面的に組み替えるという案であれば、決して反対ではありません。

    ◆その代わり、低所得者への手当や格差是正につながる諸政策が欧米諸国(特に社会民主主義的なヨーロッパ諸国)のように実施されることが前提です。現在の日本の税制改革には欠けている視点だと考えます。現在の改革は、既存の制度のつぎはぎにすぎないのではないかと筆者は考えています。





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    2012.04.20 Fri  - 経済 -   コメント 0件

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