※前回の記事「消費税収は本当に景気に左右されないのか」をリメイクしました。記事そのものを修正したかったのですが、拍手をいただいたので、前回の記事は削除しておりません。改めてご一読いただければ幸いです。

    ◆消費税増税に際し、財務省は消費税収が景気の変動を受けにくいとしています。増え続けている社会保障費用を賄うために、安定財源を確保したいという趣旨から、所得税・法人税ではなく、消費税の増税が志向されています。しかし、その前提条件である「景気の変動を受けにくい」という消費税の特性は事実でしょうか。

    ◆下図は財務省がホームページで公開している消費税収に関する説明です。

    H24.4.18消費税収2-財務省

    http://www.mof.go.jp/gallery/20110311.htm

    ◆財務省はこの図を用い、次の主張を展開しています。

     1.消費税収は景気変動に関わらず10兆円前後で推移している
     2.消費税は所得税・法人税と比べると、景気変動の影響を受けにくい

    ◆財務省の主張の一つ目である、消費税収の安定は事実でしょうか。

    ◆下図は、消費税率が3%であった平成2年(1990年)から平成8年(1996年)までの消費税収の推移と名目GDPの推移を示したものです。グラフは1990年の数値を100として作成しております。なお、消費税制の導入は1989年4月からであり(1~3月は消費税収がゼロ)、1990年からグラフをスタートさせています。

    H24.4.18消費税収の推移(3)

    ◆グラフが示す通り、消費税収は平成8年までに1.3倍に拡大しています(実際の税収額も4.4兆円から6.1兆円に増加しています)。一方、名目GDPも1.15倍に拡大しており、消費税収の増加と名目GDPの増加には関連があると考えられます。

    ◆では、財務省が示した「平成9年以降、消費税収が10兆円に安定した」理由はどこにあるのでしょうか。下図は、平成10年(1998年)から平成22年(2010)年までの、消費税収と名目GDPの推移です。消費税は1997年4月から5%に引き上げられましたので、先程と同様、1998年からのグラフとしました(先程のグラフ同様、1998年の数値を100としております)。

    H24.4.18消費税収の推移(5)

    ◆財務省の主張通り、消費税収の振れ幅は95から105の間であり、消費税率が3%だった時代と比較すると安定しています。しかし、その要因は上図のグラフが示す通り、名目GDPの安定にあるのではないでしょうか。

    ◆消費税収が平成9年以降、10兆円前後で安定していた理由は、「消費税収は景気の変動を受けにくい」のではなく、「景気が安定していたから消費税収は安定していた」と見るべきではないでしょうか。財務省の説明は原因と結果が逆ではないかと考えます。

    ◆平成8年までの消費税収は名目GDPの増加によって増加し、平成22年までの消費税収は名目GDPの安定によって安定していたとすると、名目GDPが減少した場合、必然的に消費税収も減少すると考えられます。消費税が安定財源となるかは、景気次第と考える方が自然です。すなわち、消費税が無条件に安定財源であるという主張は誤りだと考えます。

    ◆財務省の主張の二つ目、「消費税は所得税・法人税と比べると、景気変動の影響を受けにくい」については冒頭に記載したグラフから、その事実を読み取ることができます。しかし、下図の税収全体の推移を見ると、より根深い問題が浮かび上がります。

    H24.4.18税収2-財務省


    ◆消費税率が3%であった平成8年の一般会計税収は52.1兆円です。しかし、消費税率が5%に引き上げられた平成9年以降、この52.1兆円を上回った年は平成9年のみです。この平成9年の税収増は、消費税率の引き上げ直前の駆け込み需要によって、前年の名目GDPが大きく拡大したためと考えられます。その後のデータでは、増税の効果がゼロに等しいといえます。

    ◆以上の内容から、消費税を引き上げた場合、どのような事態が想定されるのでしょうか。

    ◆仮に財務省の主張通り、消費税収が景気変動の影響を受けないとしても、景気が悪化すれば所得税収・法人税収が減少し、消費税増税によって得られるはずの歳入アップを帳消しにするリスクがあります。また、財務省の主張とは異なる「消費税収が名目GDPの増減と関連している」場合、名目GDPが減少に転じれば、消費税収も目論見通りに増えない可能性が考えられます。

    ◆消費税増税の最大の目標は安定財源の確保にあるはずですが、過去のデータは消費税収が絶対的な安定財源であることを否定し、また、所得税収・法人税収の減少によって、トータルの税収が伸び悩んだ事実を示しています。つまるところ、税収を増やすためには、増税だけでなく、景気を上向かせる必要があるといえます。

    ◆問題は消費税増税が景気にどのような影響を与えるかです。前回の消費税増税時にはアジア通貨危機や日本の金融危機など、他の問題も多くあったため、消費税増税が不景気・デフレの引き金を引いたと断言することはできません。しかし、消費税増税が景気にプラスの影響を与えると推測する人は少ないでしょう。

    ◆税収増による財政再建を図るためには、やはり経済成長に資する政策が重要です。消費税収だけを個別に取り上げ、消費税収が景気変動の影響を受けるか、受けないかという議論はあまり意味がないと考えます。税収全体が本当に増加し、それによって財政再建や社会保障の安定につながるかどうかを検討すべきと筆者は考えます。



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    2012.04.18 Wed  - 経済 -   コメント 0件

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