◆筆者は、メールマガジン「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」の愛読者です。いつも示唆に富む内容を送信していただいており、興味がある書籍は購入するなど、有効活用しております。先日、元読売テレビのキャスター辛坊治郎氏の著書「日本経済の真実」の著書が紹介されました。筆者は著書を読んでいないので軽々に批判はできませんが、少し違和感を覚えました。

    ◆メルマガによりますと、著書では、

    小泉首相の格差拡大を批判する人は多いようですが、格差は小泉以前から拡大していた
    90年代にどんどん増えた歳出は、小泉時代に入ると横ばいになり、税収もバブル崩壊後初めて持続的な上昇傾向に転じています。・・公社債発行額も横ばいになります

    といった趣旨の記載があるようです。メールマガジンでは記載の一部をピックアップされているため、辛坊氏の主張を全て理解している訳ではありませんし、また、上記はメルマガの発行者の方の主張でもありません(筆者はメールマガジンを批判する意図は持っていません)。

    ◆小泉政権期の政策に好意的な意見では、その多くが上記の内容を指摘しています。しかし、この小泉政権評は本当に妥当でしょうか。

    ◆小泉元首相が政権を担った期間、日本の格差はむしろ縮んでいたという指摘があります。これは数値データでも検証されており、その指摘は正しいでしょう。問題は、にもかかわらず、小泉政権に批判的な意見では、なぜ、格差社会の拡大が訴えられるのかを考えるべきです。これをメディアのネガティブキャンペーンを原因とするのは早計です。

    ◆小泉政権の抱える最大の問題は、それまでの格差の拡大に対し無策であった、ことにあります。小泉政権期に格差が縮小した理由は、円安下で、輸出の拡大が景気のけん引役を担ったために、雇用が拡大したことにあります。しかし、雇用拡大が実現しながら、賃金の上昇は見られなかった、むしろ一貫して下がっていたという側面を見過ごすべきではないでしょう。

    ◆この時期には、バブル崩壊後の氷河期に正社員として就職できなかった世代の生活苦が問題になりつつある時期でした。しかし、小泉政権は正社員と派遣社員の同一労働同一賃金には触れず、放任し続けたまま、今日に至っています。その結果、このロスジェネ世代の社会保険料の未納が増え、この世代の将来不安は強まる一方です。

    ◆国債発行額が横ばいだったという指摘も、財政再建が進んだということではありません。国債残高は小泉政権期にも一貫して増え続けていたのです。仮に国債発行額が横ばいでも、償還期を迎えた国債より多額の国債を発行し続ければ、返す額より借りる額の方が多いのですから、国債残高は増える一方です。

    ◆自らを「借金王」と評した小渕内閣の公債発行額は平成11年度で37.5兆円、平成12年度で33兆円です。小泉政権では平成14年度以降、35兆円、35.3兆円、35.5兆円、31.3兆円、27.5兆円と高水準の公債が発行されています。終盤の公債発行額の減少は税収の拡大によるものですが、これも欧米の景気拡大によって輸出産業主導の経済成長が実現したためです。

    ◆もちろん、好調だった景気の背景には不良債権問題の最終的解決を果たした功績や、日銀を動かし、ゼロ金利、量的緩和策党による金融緩和が影響したことを無視すべきではないでしょう。しかし、最終的に設備投資や雇用拡大が実現した決め手は、欧米の景気拡大による輸出増と円安です。それを証明するかのようにリーマンショック後には、景気後退と円高が進んでいます。

    ◆そもそも政治とは、単に経済成長を演出したり、社会保障サービスを提供するだけではないはずです。筆者は儒教に詳しくはありませんが、本来的には物質的なサービスだけでなく、豊かさ、平和といった感覚的な安心感を提供することに、政治の意義があると考えます。すなわち、徳の高い政治が行われるべきです。

    ◆小泉政権では、格差は当然のことといった価値観が醸成され、靖国神社参拝問題では中国・韓国との深刻な感情的対立も招きました。拉致問題の曖昧な解決の結果、北朝鮮は解決済みという主張を繰り返し、日本は経済制裁で対抗するという安全保障上の危険性まで作りだしています。この外交の失敗は、拉致被害者解放という折角の功績を消しかねないものです。

    ◆自己責任という言葉は独り歩きを始め、観光ではなくボランティアとしてイラクにいた日本人が誘拐された時は、救出費用を被害者に求めるなど、危険を冒してボランティアに努めた人物に対し、無理解な対応が続きました。この時の日本政府の対応に対し、当時のアメリカの国務長官パウエル氏の発言はまさに政治と呼べる、素晴らしいものです。以下、引用です。

    誰もリスクを引き受けようとしなかったら、私たちには前進はなくなります。私は、あの日本市民たちが、より大いなる善のため、よりよき目的のために、すすんで自分の身を危険のなかに置いたことを、嬉しく思っています。日本の人たちは、こういう人たちがすすんでああいう行動をとったことを誇りに思うべきです。

    ◆仮に東日本大震災の際に、仮にボランティアに行った人が余震で死傷した場合、それは「自己責任」と冷たくあしらえるでしょうか。パウエル氏のような崇高な理念を持つリーダーが日本には必要です。そのような人物のもとでなければ、痛みを伴う改革に国民は納得しないでしょう。現在懸案となっている問題の多くは、小泉元首相が不人気を恐れて説明を逃げた問題ばかりです。

    ◆筆者は以上から、小泉元首相を支持できません。小泉元首相の政治姿勢を再現するかのような橋下市長の政治にも常に危うさを感じます。小泉政権の最大公約であった「郵政民営化」が事実上撤回された今、小泉政権を本当に総括すべき時に来ているように感じます。

    ◆なお、余談ながら、野田首相の「私がやりたいことは、やらなければならない事を先送りする政治との決別だ」という発言は説得力を感じます。筆者は、消費税増税には?という考えを持っていますが、この姿勢だけは評価できます。ただし、国民の多くに「ついて来て欲しい」と訴えるためにも、一度解散総選挙が必要ではないかと考えます。

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    2012.03.26 Mon  - 政治 -   コメント 0件

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