◆東日本大震災の追悼式において、天皇・皇后両陛下が退席される際に参列者が着席していた問題について、自民党の高市早苗議員が提出した質問主意書に対し、政府は「内閣府が宮内庁とも十分に協議を行った上で、参列者を着席とすることとした」とする答弁書を閣議決定しました。

    ※読売新聞ニュースによれば、「天皇、皇后両陛下が出席される政府行事で参列者にどのような対応を求めるかについて、『式典の趣旨や参列者、前例などを総合的に勘案して適切に決定している』と説明した。政府によると、昨年以降の10行事では、7行事で参列者は着席していた。」と報道されています。

    http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120321-OYT1T01207.htm

    ◆海外では、国家元首の退席時に起立することが通例となっています。アメリカ大統領とそのスタッフを描いたアメリカのドラマ「ホワイトハウス」でも、「この国では大統領が起立している時は、他の者も起立することが常識だ」という台詞が飛び出すほどです。海外の例に倣えば、天皇陛下の退席時には起立することが当然で、日本は「非常識」だったのかもしれません。

    ◆しかし、ここはよく考えるべきではないでしょうか。はたして、天皇陛下が出席される行事等を全て海外基準に当てはめていくことが必要でしょうか?

    ◆以下は関西の雛祭りのお内裏様とお雛様の写真です。

    H24.3.21雛祭り

    ◆関西ではお内裏様はお雛様の左隣(向かって右側)に配置します。これは関西と西日本の一部に見られる風習で、他の地域ではお内裏様はお雛様の右隣(向かって左側)に座られます。天皇陛下も、皇后陛下と並んで立たれる場合、皇后陛下の右隣に立たれます。これは二人が並んだ際に右側の人の方が地位の高い人である、という海外の常識に基づくものです。

    ◆この天皇・皇后両陛下の並び位置は、明治時代に国際常識として日本に持ち込まれ、それ以降、天皇陛下は皇后陛下の右隣に立たれることになりました。雛祭りの人形の配置も、これに倣って、多くの地域で内裏様をお雛様の右隣に配置するように変わります。しかし、関西は基本的にお上に従わない文化が根強いのか、それ以前の風習にこだわり続けています。

    ◆日本では、古来より左側の人の方が地位の高い人という風習が続いてきました。左大臣と右大臣、どちらが偉いか?といえば、左大臣の方が偉いのです。ひな祭りの人形でも五人囃子の下の段には左大臣と右大臣が配置されます。左大臣は右大臣の左隣(向かって右側)に立ちます。お内裏様の位置だけが変わって、左大臣の位置は変わっていません。

    ◆文明開化とは、極めて短期間に行われた壮大なグローバル化です。これに反発して西南戦争などの内乱まで起こりました。今、改めて日本の古来の風習を見直した場合、天皇陛下の立ち位置まで変えてしまう必要があったのか、疑問を覚えます。グローバル化すべき事項と古来の風習を大切にすべき事項をしっかりと見分ける必要があったと考えます。

    ◆天皇陛下のご退席時にはどのように振る舞うべきでしょう。

    ◆戦前のように、ご真影に拝礼し、映画などで皇居の映像が出るや、人々が起立するという時代もありました。もっと昔にさかのぼれば、天皇陛下に直接話しかけることも一部の公家の特権だった時代があります。どの時代のどのような風習がよいのか、きちんと考えるべきです。海外ではこうだ、という短絡的な視点で風習を変更することは避けるべきです。

    ◆君が代・日の丸の問題にも似た要素がありますが、過去のように、天皇陛下という「君主」と「臣民」が存在した時代に比べて、今のように国民と近い位置にいらっしゃる天皇陛下を必要以上にあがめることは、筆者は避けるべきだと考えます。大阪の教員のように天皇陛下の退席時に「教師生命をかけて起立しない」という人が現れるようでは、国民を不必要に分断しかねません。

    ◆天皇陛下退席時の起立・不起立は、今まで通り、その行事のTPOに任せればよいのではないでしょうか。起立を絶対化すると、その分だけ天皇陛下は国民から遠い存在になりかねません。加えて、そのような行為を義務付ければ、反発する人も出るでしょう。天皇制の存立を徒に脅かす危険もあるように考えます。

    ◆逆に、天皇陛下の立ち位置や雛祭りの人形の配置など、不必要にグローバル化したものは、日本の古来の風習に戻せばよいと考えます。天皇をより天皇らしく、天皇制をより天皇制らしくする知恵が必要だと考えます。天皇陛下は今はもう「君主」ではなく、司馬遼太郎が表現したように「大神主」でもありません。国民と親しい関係にある現代の姿が一番だと筆者は考えます。

    ◆高市議員は質問主意書を作成し、政府に回答を求めました。その回答を作るために官庁で議論し、閣議決定までなされました。しかし、自民党が政権にある頃から、起立が徹底されていなかったことを考えると、官庁の仕事を増やすより、自民党の歴代首相に尋ねる方が早かったのではないでしょうか。ご存命の元首相は、皆さん元気に活躍中です。

    ◆高市議員の仕事も税金で拠出する歳費で成り立っています。この質問は、議員が自分の歳費を使い、自分で調べれば解決できたように思います。うがった見方をすれば、税金を無駄遣いする売名行為のように思えてなりません。コスト意識の低い政治活動に見えます。



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    2012.03.22 Thu  - 政治 -   コメント 0件

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