◆少し前ですが、AKB48のドキュメンタリー映画を見てきました。結論から言うと、少し冗長に感じました。内容について一部記載したいと思いますが、ご覧になられていない方はご注意ください。

    ◆以前、AKB48のプロデューサーである秋元康は、AKB48の魅力を「一生懸命さ」にあると述べていました。劇中でも登場する西武ドームのコンサートでは、普通のアーティストならば、体力配分のペースを考えるところは、彼女たちはガムシャラに取り組み、過呼吸や熱中症の症状に襲われても、それでも頑張る姿にファンは感動してくれる。

    ◆確かに、映画の中で見せたAKB48のメンバーのひたむきさには胸を打たれるものがあります。しかし、やや美化しすぎではないでしょうか。過呼吸の発作が常態化していたのに、ステージで歌わせるというのは、健康管理上問題ではないでしょうか。熱中症に至っては、クラブ活動中の生徒の死亡事故も起こっています。少し甘く見過ぎではないでしょうか?

    ◆AKB48のメンバーは西武ドームのコンサートの初日にダメ出しを受けて、深夜にもかかわらず、西武ドームの駐車場でダンスの振り付けの再確認などに打ち込みます。AKB48のメンバーには未成年も数多くいますが、夜間にこのような活動に取り組んだメンバーは年齢の面で本当に大丈夫だったのでしょうか?

    ◆AKB48は、これまでの他のアイドルと異なり、メンバー一人一人の所属事務所が違います。それぞれの所属事務所からマネージャーが来ているのだろうと推測しますが、所属しているメンバーの健康管理は所属事務所の重要な責任です。秋元氏のAKB48に対する指導と所属事務所の健康管理という仕事は重複せず、きちんと分担されているのか疑問です。

    ◆「AKB48は現代の女工哀史」という雑誌の記事もありましたが、給与・待遇ではなく、労働形態という意味で、極めて現代的です。複数の所属事務所からメンバーが構成されている構図は「派遣労働」という印象を受けます。その派遣労働者が「総選挙」などの厳しい競争をお互いに励まし合いながら、取り組んでいる姿は、確かに「女工哀史」を彷彿とさせます。

    ◆マルクス経済学では、資本家による労働者からの搾取を理論的に示しました。すなわち「剰余労働」の存在についてです。町に並ぶ商品の価格は賃金やその他のコストに利益が上乗せされています。企業は、労働者が生み出した付加価値より低い賃金を支払い、その分利益を得ます。逆にいえば、労働者が賃金以上に働く「剰余労働」によって、企業に利益がもたらされます

    ◆確かに、企業や資本家は、それ以前に投資によって工場や機械を購入しているでしょう。あるいは、発明によって知的財産を所有しているでしょう。しかし、生産される財・サービスの価値は、労働者がその機械や知的財産を活用した結果、生み出されます。この労働者が生み出した価値と企業の利益が上乗せされた実際の価格が等しくないことにマルクスは注目しました。

    ◆労働者の生産活動が正当に評価されているなら、その価値は実際の価格と等しいはずです。そして、価値に見合う賃金を得られているはずです。そこで、資本家が持つ生産財や知的所有権を労働者が所有することを目指す「共産主義革命」という発想が生まれます。

    ※話が脱線していますが、その意味では共産主義国家である中国が知的所有権に疎いのは、疎いのではなく、イデオロギー的に受け入れがたいものなのかもしれません。

    ◆あらためてAKB48ですが、実際の彼女たちの生産活動によって生み出された価値と彼女たちの賃金には差があるでしょう。筆者は共産主義者ではありませんので、それは当然だと考えます。しかし、彼女たちに賃金が渡るまでに所属事務所も通過します。AKB48としての売り上げから、秋元氏たちの製作部門が利益を受け、事務所が利益を受け、そしてようやく賃金になります。

    ◆この構図は派遣労働も同じで、企業や派遣会社が利益を受け、ようやく労働者の利益になります。あえてネガティブな表現をとれば、複数回の「ピンはね」を経て、派遣労働者の賃金は決まります。それでも派遣労働者が派遣会社の正社員で、社会保険も完備されていればよいのですが、登録型の派遣労働者では仕事がなければ賃金はなく、社会保険も未整備というケースもあります。

    ◆AKB48のメンバーも、きちんとした待遇を受けているのか、心配になります。もちろんトップクラスのスターは大丈夫でしょう(健康管理という面では極めて不安ですが)。しかし、末端のメンバーとなると、どこまで生活や将来が考えられているのか、疑問を覚えます。総選挙の順位が低ければ、「AKB48脱退」という美名のもとに「派遣切り」に合うことはないのでしょうか?

    ◆中学生くらいから、AKB48に所属し、高校に通うことなく、ダンスや歌のレッスンを受けながら、しかし、残念ながら人気が出ることなく、若い時代を終え、気がつくと別の仕事につくだけのキャリアはない、という事態に陥ることは大変危惧されます。秋元氏が、その末端の女の子の将来をどこまで考えているのか、映画を見て、少し不安を覚えました。



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    2012.03.08 Thu  - 社会 -   コメント 0件

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