◆時間がないため手短な内容ですが、筆者はこれまで記載の通り、インフレ目標の効果に懐疑的な立場をとっています。日経新聞の記事では、日銀の白川総裁のコメントを以下の通り、報じています。

    「中央銀行がお金を供給するだけで物価が上がるわけではない」と語り、成長力の強化など政府や民間の取り組みも欠かせないと述べた。

    ◆物価上昇を目指すからには、投資・消費を促進する必要があります。金融緩和は市場の投資意欲・消費意欲の醸成を図るものでしょう。しかし、実際に投資・消費を行うかどうかは、投資家や企業が収益見込みを立てられるか、消費者が貯蓄志向から消費マインドに転向するかが重要と考えます。問題は、今回の政策変更がそのような投資・消費環境を醸成できるかにあります。

    ◆投資・消費はそれぞれの需要の発生によって拡大します。金融緩和は確かに投資・消費のチャンスを拡大できますが、今、社会がそのチャンスをどれだけ求めているか疑問です。金融機関や他の産業の経営者のリスク回避姿勢は根強く、消費者も消費税増税や受け取れる年金額の減額といった将来不安があり、今回の政策変更で、これらが具体的に軽減される訳ではありません。

    ◆逆に、これまでインフレ目標の設定を求めてきた論者の中には、物価上昇率を2%以上とすべきという意見もあり、こうした視点からは、日銀の政策は不十分という批判が起こるのではないかと考えます。

    ◆アメリカのFRBがインフレ目標を設定した際、追加的な量的緩和には触れませんでしたが、日銀は10兆円の基金積み増しを宣言しました。この点はアメリカよりも踏み込んでいますが、一方で目標インフレ率の設定は、アメリカが2%であるのに対し、日銀は1%であり、目標数値の低さは、むしろ中央銀行の自信のなさを露呈するのではないでしょうか?

    ◆通貨レートについても、南欧諸国の国債の格付け低下もあり、本来はユーロ安が進行する展開です。量的緩和によって一時的に円安に展開しようとも、ユーロの本質的な弱さは変わりませんし、仮にドルに対して円安という展開になれば、ドル安を容認しているオバマ政権が、そのような展開を望まず、日米の政治的力関係から、再びドル安に押し戻される可能性も高いと考えます。

    ◆株価の展開は不透明ですが、これを機に株を買いましょう、といわれた場合に、金融機関や企業、投資家がどこまで反応するか疑問です。日銀自らが認めるように、デフレ脱却への効果が見込めない、と市場が予測すれば、日銀の金融政策は空振りに終わると考えられます。

    ◆白川総裁のコメント通り、筆者も日銀の金融政策だけでは不十分と考えます。しかし、もし不十分ならば、どのような政策をとるべきか、日銀から提言があってもよいと考えます。それは社会保障政策の充実なのか、税制の改正なのか、具体的に触れるべきでしょう。日銀の使命は「物価の安定」であり、その使命のためには自らの守備範囲を超えた対応も必要だと考えます。

    ◆今回の日銀の姿勢は、インフレ目標を設定すべきという主張から見れば不十分であり、また日銀だけではデフレ脱却は難しいと、初めから否定的な見解を示していることもマイナスです。逆に、金融政策以外の政策が必要と考える主張からすると、日銀と政府の連携の弱さを露呈するだけで、デフレ脱却の具体策がいまだに見えない、という落胆を覚えます。

    ◆金融政策を展開する中央銀行は、その効果を最大限に高める術を考えるべきであり、逃げ道を事前に確保するような今回の対応は、筆者は不適切だと考えます。



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    2012.02.15 Wed  - 経済 -   コメント 1件

    コメント

    No title
     日銀の緩和策に、市場は反応した。通貨安と株高。通貨安は輸出促進効果、株安は資産効果、これが金融緩和の目的(アメリカはこれを狙った)。理論通り。

     デフレは「貨幣要因」と「実物経済要因(需給ギャップ」の2つからなる。

     どちらか一方だという学者がそもそもおかしいし、「実物要因」だとする日銀もおかしい。

     日銀については、まず、小宮論争を把握しては?単なる(失敗)責任回避のポジショントークだとわかるから。
    2012.02.16 Thu l 大学生. URL l 編集

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