◆相続税・贈与税など資産への課税についてご質問を頂いております。これらの資産は、所得税を納税した後に蓄えられた資産ですから、本来、これにさらに課税する必要はありません。アメリカではブッシュ政権期に一度相続税が廃止されています(オバマ政権になって復活しています)。

    ◆筆者は以下の2点から、相続税・贈与税の増税を許容しています。

    ◆一点目は格差是正です。

    ◆所得税を納税した後、築かれた資産に課税することは当然反対です。しかし、それは資産を築いた本人が存命の内、あるいは本人がその資産を所有しているうちのことです。これが他人に相続・贈与される場合、その他人は資産を築く努力なしに、資産を手に入れることになります。考え方としては、臨時所得を受け取ったことと同じです。

    ◆資産の相続に限定すれば、豊かな家系は常に豊かであり、貧しい家庭は常に貧しいままということになりかねません。資産を築いた人が豊かであることには何の問題もありませんが、その子・孫まで豊かさが継承されれば、階級社会を築くことになります。

    ◆むしろ、高資産家に求めるべきことは資産を使い切っていただくことではないでしょうか。消費は経済を活性化させますし、消費税収を増やすことにもなります。資産を残したいと考えるならば、特定の人のためではなく、社会全体のために資産を残し、活用したい。そのために相続税は高率であってよいと筆者は考えます。

    ◆二点目は、高齢者医療費や年金負担の増加です。

    ◆年金・医療にかかる歳出は年々増加の一途をたどっています。これが深刻な財政赤字を食い止められない原因となっています。高齢者医療費や年金は、現役世代が多く負担しています。しかも、その現役世代が受け取れる年金額は2013年問題が示すように減額の方向に向かっています。

    ◆あらためて、現在の資産家の資産がどのように築かれたかを考えるべきではないでしょうか。それは高齢社会への対策が遅れた結果、現在の高資産家は、本来、もっと多く税を納めていただくべきだったにもかかわらず、見積もりが甘く、低い税率で納税してきた結果、今の資産を築いたとも考えることが出来ます。

    ◆相続税の増税は、所得税の納税漏れ(本人に罪はありませんが)をいわば補填する意味合いを持つものと考えます。現実に、年金を受け取り、医療費がかかる世代に、日本の個人資産は集中していますので、相続税は実際の費用負担という意味でも、やはり課税すべきと考えます。

    ◆同じことは財政赤字にも言えます。財政赤字は歳入よりも歳出が多かった結果、発生したものです。本来は国債ではなく増税によって財政赤字の累積を防ぐべきだったはずです。ここでも、税率を不当に低く抑えてきたがために、今日財政赤字は拡大し、現役世代がそのツケを支払う結果となっています。

    ◆低い税率の時代に恩恵を受けた世代が残す資産は、当然にして、この財政赤字の解消に役立てるべきでしょう。その意味でも相続税の増税は不可避だと筆者は考えています。

    ◆繰り返しになりますが、資産を築いたことに対して懲罰的に相続税を課税しようというものではありません。資産はむしろ使い切ってもらうことを前提にすべきです。残すならば社会全体のために役立てるべきだという考えから、相続税は高めに設定してはどうかと筆者は考えます。



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    2011.09.25 Sun  - 政策 -   コメント 9件

    コメント

    相続
    親から相続するのが資産だけなら、それは自分で稼いだものでないから課税するというのもありでしょう。あいにく、親から引き継ぐのは資産だけではありません。遺伝情報やら悪名あるいは名声まで引き継ぐのです。それらは知らないふりをして、なぜ資産だけに課税するのがOKなのか理解できません。ハンサムに生まれた人も、不細工に生まれた人もきちんと平等に精算してくれるなら、相続税も許容できます。なぜ、資産だけ不平等是正のために課税して、遺伝情報の不平等是正はしないで良いのか、回答いただきたくお願いします。
    2011.09.25 Sun l 赤野他人. URL l 編集
    Re: 相続
    > 親から相続するのが資産だけなら、それは自分で稼いだものでないから課税するというのもありでしょう。あいにく、親から引き継ぐのは資産だけではありません。遺伝情報やら悪名あるいは名声まで引き継ぐのです。それらは知らないふりをして、なぜ資産だけに課税するのがOKなのか理解できません。ハンサムに生まれた人も、不細工に生まれた人もきちんと平等に精算してくれるなら、相続税も許容できます。なぜ、資産だけ不平等是正のために課税して、遺伝情報の不平等是正はしないで良いのか、回答いただきたくお願いします。


    むしろ、親から相続するもののうち課税できるものは資産だけ、ということでしょう。

    遺伝情報はそもそも善悪の概念を持ち込むべきとは思いませんが、
    仮に不平等が発生するとしても、これを医学的に是正はできません。

    資産以外に生前多額の教育費を投じてもらったことによる学歴や
    政治家の子ならば選挙基盤なども不平等のタネですが、これらには課税しようがありません。

    しかし、課税できない不平等があるから、資産にも課税せず、
    階級社会の固定化を進めることには賛成しない、というのが私の考え方です。


    2011.09.26 Mon l a.liberalist.77. URL l 編集
    質問と提案
     提案もなく言うのも失礼かと思いますので、格差是正の提案を。
     念のため申し上げますが、国民が階級化するのが良いことだとは思っておりません(世界の人々についてどう考えるは、論じません)。結局階級化の原因は、遺伝と財産と行動と人脈かと思います(ちなみに、名士の生まれかどうかは、生まれた病院がどこかで決まるとか?)。
     同意いただきました通り、遺伝については放置されています。資産家から相続税という名目で財産を国が強制的に徴収するように、背の低い人には背の高い配偶者を、運動選手は運動音痴な配偶者を、低学歴の人(一般に、低所得者)には高学歴(一般に、高所得者)の配偶者を、・・・と立法することで、補正することも実は可能なのにです(いかがですか?少しでも格差を是正できれば良いというのであれば、当然これらにご賛同いただけますよね?)。
     行動と人脈ももちろん遺伝と関係はあるわけですが、教育でそれらに影響が与えられるとすれば、やはり公教育の改善をすれば長期的に階層化は緩和されるでしょう。ということで、前置きが長くなりましたが、提案は「親戚に公務員が居る家系の子供は、国内の公立学校以外に通えない」というルールです(当然、関係者は抽選のある懸賞に応募できないという原則により、国立の小中学校も受験できません。もちろん、公務員宿舎も廃止が必要です)。そうすれば、役人は必死で公立学校の教育水準を高めるものと思います(都会では一層塾が流行るだけかもしれませんが、塾の時間は学校の時間に比べて短いです。土曜日も公立学校で授業が再開されるかも)。
     シンプルかつ実行可能と思いますが、いかがでしょうか?もちろん、役人が次々離婚して親で無くなっていくというような事で対応するかもしれませんが、公僕たる公務員がそんな人ばかりでないと、まだナイーブなので信じています。
     相続税に反対なのは、いわゆる本当の資産家は、○○記念財団とか、☓☓奨学財団とかを作り、結局相続税を払わずに、親戚で理事会を構成して財産を保有管理し続けることが可能であることも理由の一つです。
    2011.09.26 Mon l 赤野他人. URL l 編集
    Re: 質問と提案

    格差是正だけを唯一の目的にするならご提案のような意見もあり得るかもしませんが、
    婚姻の自由を始め、さまざまな自由、権利を考えるとご提案は実現不可能だと思います。

    しかし、資産以外の格差是正は無理なのだから、資産格差の是正も不要とは考えられませんので、
    当方としては相続税の増税に賛同しております。



    2011.09.27 Tue l a.liberalist.77. URL l 編集
    残念です
     格差の拡大が公共の福祉に反すると思えば、私有財産も収奪できますし、配偶者も制約できると思いますけどね。どちらも、立法するかどうかの問題だけで、無理だで終わりというのは論理に一貫性もないとおもいます。結局相続税という仕組みは、婚姻制限と同じおかしいのが理解いただけましたでしょうか?ご理解いただけてないようなら、非常に残念です。
     反対理由が、相続税の増税は立法できるけど、婚姻制限は立法できないって言うだけでは、親子間の格差是正をしたいというのは本気じゃなさそうに思います。私は、差はあって当然という立場です。顔も違えば体格も違えば、話す方言も違います。無理に是正する事もなし。ただ、義務教育はきちんと受けさせる義務があると考えおります。
     で、私の提案についてはいかがお考えでしょうか?自動車会社の社員が自社の車に乗るのと同様で、サービスを提供しているグループが、その品質保証のためサービスを利用するというのは、駄目でしょうか?ご意見をいただければありがたいです。(これも、実現無理だから無理ですですか?)
    2011.09.27 Tue l 赤野他人. URL l 編集
    Re: 残念です

    本稿は資産格差の是正を取り上げており、富の再分配という観点から
    相続税の増税は支持することを記載しています。

    婚姻制限は上記とは別問題であり、婚姻の自由を犯すと考えますので、
    当方は支持いたしません。

    公務員の教育に関するご提案も興味深いとは思いますが、
    学校を選択する自由を奪う行為ともなりかねませんので、
    やはり支持できません。

    婚姻制限や公務員の教育に関するご提案について
    立法化を主張されること自体には反対しませんが、
    残念ですが賛同はできません。

    ご了承のほどよろしくお願いいたします。

    2011.09.27 Tue l a.liberalist.77. URL l 編集
    ありがとうございました
     お忙しいところ、ご回答ありがとうございました。
     私は、資産の再配分を相続時にすれば、多少なりとも格差是正したことになるので良いというご意見に、胡散臭さ、ご都合主義を感じますので反対です。
    #婚姻は資産格差にかなり直結している様に感じております。恐らく、この点同意いただけると思います。
     なお、私の立場は、もちろん、婚姻などを制限するべきでもなく、消費税率以上の相続税も無い方が良いです。
     見知らぬ人でなく、自身の孫や子供に財産を残したいという故人の遺志を制限することは、格差是正のため良いが、一方、格差是正のために学校を選択する自由を奪うのは良くない、というご意見なのですね。賛同いただけず残念です(これは、婚姻などに比べて実現するのも難しくなさそうですけどね)。
     (財産をどう残したいかというのも個人の自由と私は解しております。孫に残したいとか残したくないとか遺産をどうするかも選択の自由と解していまして、国が決めるべきものではないと。)

     学校選択にも関係します公務員宿舎、社宅は、無いほうが良いというのは、同意見で賛成です。
    #基本的に、実は護憲に対しまして賛成の点が圧倒的に多いですw

     私は、公教育の充実とかいくら言っても、まず公務員自らがサービス購入者にならないと国民は納得しないだろうと。なので、格差是正のため公教育を充実させるためには、公務員の子弟は、公立学校へ!が必須と思います。
    #これを実行しない限り、格差是正を公務員と政治家は本気でヤル気がないと理解します。

     財政的な理由からいえば、相続税よりも社会福祉の削減しかありません。これは、ご承知のとおりかと存じ上げます。したがいまして、純粋に財政的な理由からなら、相続税でなく社会福祉をどう削減するかというご提案のほうが重要でしょうね。

     お忙しいところ、誠にありがとうございました。失礼申し上げました。
    2011.09.27 Tue l 赤野他人. URL l 編集
    訂正
    護憲→ご意見

    失礼しました。
    2011.09.27 Tue l 赤野他人. URL l 編集
    勉強になります。
    幸せのための経済学――効率と衡平の考え方 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ) 蓼沼 宏一 http://www.amazon.co.jp/dp/4005006884/ref=cm_sw_r_tw_dp_Or.Iob0HDG6TN
    2011.10.05 Wed l 赤野他人. URL l 編集

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